親犬を見よう!〜犬たちを助けるシンプルなルール〜

きなこ先生

子犬を「買う」こと自体は悪いことではないけど、その際は親犬の様子をしっかりみてあげることが大切ワン。どういうことか説明するワンね!

「どんぐり」「リマ」「マルコ」「こまち」「チェロ」「コア」と今はそれぞれ名前を持つワンちゃんがいます。
みんな、今まで私がボランティアで預かっていたワンちゃんたちです。

甘えん坊だったり、目がくりっとしていたり、癒し系だったり、明るく真っ直ぐだったり、それぞれが言い出したらキリがないほどの魅力と個性に溢れていて、今は各家庭で幸せに過ごしています。

でも、それはごく最近の話。

生まれてからの5、6年間は、ずっと名前もなく、十分に散歩もされず、販売用の子犬を産む為に狭いケージで生かされていた繁殖用の犬でした。人間で言うと約40歳です。

6匹はみな、子犬を商品として生産する場所(パピーミルと呼ばれ所もあります)で子犬をつくるための繁殖犬として繁殖業者によって使われ、その間に健康を失い、繁殖に使用された5~6年後に放棄されています。

2012年に法改正されるまではそのまま保健所で殺処分されていた子達ですが、法改正により保健所が受け取りを拒否できるようになり、今度は行き先が保護団体に変わったものの、悪質なタイプの繁殖業者は基本的に現在も同じことをし続けています。

最初から親犬を生涯お世話するつもりなどなく使い終わったら放棄するつもりでいる悪質な繁殖業者が多くいます。そこにいた子たちは、保護時の様子や健康状態から、狭く不潔な檻の中で汚れにまみれた状態で飼われていた可能性が高いです。

吠え声を減らすために声帯を潰す悪質な業者もいます(どんぐりくん、マルコくんは声帯を切られていました)。

もともとは健康な子でも、狭いケージで十分に運動もさせてもらえずに何年もいると、骨が曲がったり、歯は溶けてしまったりします。でも、治療を受けられるわけではありません。商品となる子供さえ健康だったらいいからです。
(全員歯周病がひどく、歯をたくさん抜きました。マルコ君、チェロ君は歯が一本も残りませんでした。)

人間で言うと約40歳〜50歳まで繁殖させられていた犬たちを保護団体などが保護しても、また新しく、別の健康な子犬が繁殖犬になって閉じ込められていて、不幸なループは続いているのです。

不幸な親犬たちは誰のせい?

なぜそんなことをするのかというと、店頭に可愛い子犬だけを並べて販売している為です。
そこでは子犬しか見ないため、親犬の生活確認はできません。

親犬がどんなに酷い環境で健康を失っていても、それは見せないで済む仕組みになってしまっています。

それに気づかない人は、目の前の子犬や子猫さえ可愛ければ買っていくので悪質な繁殖業者でも利益を得続けていきます。

買う側が、親犬たちのことを気にしてないのを良いことに、悪質な業者は親犬にコストをかけずに繁殖だけさせます。

私は実際にこの目で病気でも治療をしてもらえない親犬たちを数多く見てきました。

巧みなビジネスの裏にある現実を知らずに人々がペットショップで犬を買うことで、親犬を苦しめている繁殖業者とそれを認めている仲介業者は儲かっていて、彼らのビジネスが拡大しています。

きなこ先生

動物好きの消費者さんは悪くないのに、嫌な話だワンよね。でも、わたちたちにできることもあるワン!

彼らはビジネスをやめません、なぜなら儲かるからです。
親犬の生活を見せなくても子犬が売れる以上、子犬だけ見せて販売するビジネスは拡大し、また新たに子犬の生体販売をするペットショップが街角に増えているのです。

もし、1人の人間が動物に酷いことをしていたら、それは残酷だと非難される。
しかし、たくさんの人間によってたくさんの動物たちがひどい目に遭っていても、特にビジネスの名の下では、残酷さは容認され、お金が絡むと、普段は聡明な人が、最後までその残酷さを許してしまう。

ルース・ハリソン(イギリス)
きなこ先生

最近は生体販売をしないペットショップさんも出てきたワンよ✨

子犬たちの命も・・・

親犬だけでなく、子犬たちにもリスクはあります。
日本では、競り市などで仕入れられた子犬たちが、全国のお店で販売されるために輸送されますが、その過程で年間1万匹以上の子犬たちが亡くなっているそうです。
でも生き残った子達が、亡くなってしまった子の分も売れて利益が出てビジネスが成り立つため、この構造は続いています。

※ 書籍「奴隷になった犬、そして猫」参考

責任ある人たちがすること

お金さえ出せば誰でも買えるところで売るのは、子犬の安全を守る責任を放棄した無責任な繁殖業者の可能性が高いです。

通常、責任あるブリーダーは仲介を通した店頭では子犬を売りませんし、安易に輸送することもありません。

ずっと働いてくれた親犬たちにも時間とお金を生涯かけるのが当然です。

買い手は直接ブリーダーの家を訪ね、親犬と子犬が育った環境を見せてもらえますし、ブリーダーも大切な子犬の一生を預ける飼い主候補がどんな人なのか、直接会って確認します。

大切な家族となる「命」なので、そのバトンが来た場所や行く先に、買う側も売る側も丁寧に向き合うのが普通ではないでしょうか。

きなこ先生

近年は、繁殖を担う親犬も子犬の時から面談で選ばれた家庭のペットとして生活し、繁殖の時だけ繁殖施設で暮らし、契約期間後は正式にその家の子になるというスタイルをとるブリーダーさんもいるワン。

具体的には親犬の暮らしている場所や口内環境(歯や口臭)をみたり、親犬の名前を呼んで振り返るか、お散歩ができるか等で繁殖以外の社会生活を営んでいるワンちゃんか確認できます。

子犬を買う時は、おうち(親犬の実際の飼育環境)をみよう!

残念ながらいま現在も、ペットショップやネットのブリーダー販売などの生体販売の裏は非常にダークなのが現実です。

そのような、巧みなビジネスから犬たちを守るためには、消費者が賢くなるのが最も効果的です。

買う人がいなくてビジネスにならないと分かれば、それを売り続ける人はいなくなります。

子犬を飼うときには、親犬のおうちを見ること。実際の飼育環境を見ましょう)

そして、親犬のおくちや様子も確認すること。

直接自分の目でみること。

多くの業者は自分は犬のプロだと言葉では語ります。

そのとおりに実際に大切にお世話されている親犬であれば健康なはずですし、名前を呼ばれたら嬉しそうに近づいてくるでしょう。人との関わりが見えて幸せな雰囲気があり、当然、口内環境も良いはずです。

プロだと「言う」のは簡単です。でも責任をもって「行動する」のは大変です。

自称プロたちは、動物愛護法の終生飼養を守っているのでしょうか?

「子犬の親犬の生涯を最後までどのようにみているのですか?」と確認してみてください。

子犬を飼う際は、親犬も大切にしているところから買うようにしましょう。

もし、今飼っている愛犬は親犬を確認せずにペットショップで購入した子だとしても、そのことで自分を責める必要はありません(恥ずかしながら、私も現状を知ったのは最近です)。

それよりも、悪質な繁殖ビジネスをなくすために、一人でも多くの人に「子犬を買うときは親犬が大切にされているか確認しよう自分の目で親犬の状態と環境をみよう。おうちとお口をみよう。」と伝えてください。

それが何よりの力になりますし、みんなの愛する愛犬を産んだ親犬たちを助けることに繋がります。

きなこ先生

子犬を買う時は、親犬の生活を直接みてワン!

幸福な体験で、不幸を作らないように

ペットを家庭に迎え入れることは、とても嬉しく幸せな体験です。

だからこそ、子犬を飼う際は、必ず親犬たちの実際の生活環境を見て、大切にされているかを直接自分の目で確認してからにしましょう。
(※別室や、写真で口頭での確認ではなく)

自分たちの幸せな決断が、他の犬たちの不幸を助長しないように。

きなこ先生

犬を飼う際には、保護犬を迎えるのも1つの方法ワン。
子犬ちゃんもいるし、成犬は大人になった時の体格や、性格が事前にわかってミスマッチを防ぎやすい面もあるワン。

みんなの一滴でできること

もしも、ペットショップの前で、目の前の子犬の可愛さに衝動的になったり、数少ない優良ブリーダーさんを探すのが面倒だと思った時は、思い出してください。

自分たちが支払うお金で、誰がどんなことをするのを、応援しているのかということを。

そして、今購入しようとしている商品は「命」であり、あなたと同じように必ず両親がいて、名前を持たない親犬たちにも等しく価値のある「命」があるということを。

マザーテレサの言葉を残します。

私たちがやっていることが大海の一滴にすぎないことは、知っています。
しかし、大海はその一滴分、減っているのです。

マザー・テレサ(インド)

自分という一滴を、
「わたし一人ぐらいはいいだろう」と、犬たちを苦しめ続ける方に垂らすのか、
「わたし一人だけでも」と、犬たちを助ける一滴となるかで、
私たちを幸せにしてくれているペットたちの未来が変わります。

親犬も大切にしているところからしか子犬は買わない」と皆が言えば、ビジネスも健全な姿に変わっていくでしょう。

わたしたちの一滴一滴は、必ず流れとなり、川となり、やがて新しい海となるはずです。

きなこ先生

なんでも汚したり傷つけたり非難するのは一瞬で簡単だけど、それを掃除したり治したりするのは何倍もの時間がかかるものだワン。
面倒かもしれないけど、それはたくさんの犬たちが助かるからだワン。

最後に、

今もなおどこかのケージの中で体を動かせずに立ちすくしたまま時間を過ごしている、かつてのどんぐりくん、リマちゃん、マルコくん、こまちちゃん、チェロくん、コアくんのように、まだ名前を持たない繁殖犬達を想いながら、

その子達と、今後その子たちの代わりに閉じ込められていく子たちに、一刻でも早く、みんなからの一滴が届くことを願って。

きなこ先生

みんな、子犬を飼うときは親犬のおうちと様子を直接見てほしいワン!周りのお友達にも伝えてね!

イラスト:Kotomi Sato

Kotomi Sato 
1997年生まれ。東京都在住。2020年より東京を拠点に活動。アーティスト向けのCDジャケット、やポスター、企業向けのインフォグラフィック、プロダンサー向けのリーフレットなどを中心に手掛ける。
また、今年よりアートにも力を入れ、京都や東京などでも個展を開催する。
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